2時間目:国語2



就業のベルが鳴り、授業は終了する。

今日から部活動見学も始まり、皆、グラウンドや部室へ向かう。しかし、この街では大人しく生活すると決めた莉世は、黙々と帰宅の準備をする。

「おい、南の南雲。今日もヒマか?」

東は手を上げて言う。その隣には、呆れた顔をした西久保もいた。

「え、うん……」

良からぬ予感がした。しかし、咄嗟に嘘のつける器用さもない。

「よし、じゃ昨日と同じく神隠しを確かめに行こうぜ」

嫌な予感は的中した。未来を予測する力はあるのかもしれない。

「昨日、鬼が出たじゃん……」

「だーかーら! その鬼を俺は見てねぇんだって。俺だけ仲間外れはひどいだろ。俺も鬼が見たい」

東は眉間に皺を寄せて腕を振る。まるで駄々をこねる子どものようだ。

「昨日は俺だけ単独行動しちまったし、今日は全員一緒に行動な。ヤマンバがいるし、きっと出るはずだ」

「最低でしょ、こいつ」西久保が顔を歪めて指を差す。

「昨日、あたしが襲われたからって、囮にしようと思ってんの。女の子にひどくない?」

「猿が木に登ってただけだろ」

「それが、そもそもおかしいんだってば」

二人はにらみ合う。だが、心の底から嫌がっていない西久保に、莉世は違和感を感じた。

「で、でも、西久保さんは行くの……?」

恐る恐る尋ねると西久保は照れ臭そうに目を細める。

「実は、家にこんな本があってさ」

そう言って、西久保はカバンから本を取り出す。カバーに五芒星の描かれた年季の感じられる古本だ。

莉世は首を傾げる。「何それ?」

「よくわかんないけど、何か魔法陣とか書いてあってね。これ見て」

そう言って西久保は開けた本をこちらに向ける。「『物の怪の浄化の仕方』」

「じょ、浄化……」

「浄化って物の怪を消すって意味でしょ。これで鬼も倒せるんじゃないかなって。家の物置にあったの昨日思い出して。あたしこれ、ずっと試したかったんだ」

「そ、そんな無茶な……」

莉世は困惑する。昨日、一番怖い思いをした者が、こんな根拠もないオカルトに頼ろうとしていることが納得できなかった。

嬉々として本を捲っていた西久保だが、ふとやりずらそうに口を曲げる。

「それに何かあっても、あの人が来てくれるだろうし……」

「あの人?」

「え、いや、何でもない」

西久保は慌ててそっぽを向く。耳は妙に紅潮する。

昨日の一件から、二人はどうも違う方向で火が付いたようだった。

だが、黒煙は周囲に害をなすものだ。莉世は苦い顔をしていた。

「昨日一緒に行った奴らはビビッてついてこねーし、他の奴らは信じてねぇってバカにするし、な、南の南雲だけが頼りなんだよ」

「こんな猿一匹じゃ不安だしさ、ね、莉世ちゃんも行こう?」

二人は前のめりに言う。こんな時だけは意気投合していた。

だが、今回は妙なひっかかりを覚えなかった。昨日と同じ場に行くにも関わらず、警戒していない。

もしかして、何事も起こらないと内心わかっているのだろうか。

「うん、わかったよ……」

気付けばそう答えており、二人は満足気な顔をした。

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