中間休み3



時刻は、午後六時〇分。

近くの時計台の鐘の音が響いたことで、今日の特訓を終えた。

神社を後にし、莉世は東と西久保の二人とわかれ道まで歩く。

「あ〜くっそ。脚だりぃ」東は、太ももを擦りながら言う。

「鬼神の攻撃、避けてたよね。見えてたんじゃん?」西久保は問う。

しかし東は「いや、見えてねぇよ」と悔しそうに首を横に振った。

「でもよ、松風と左門っつったっけ。あいつらの攻撃は読めるようになったんだよ。地面が割れたり、風が吹いたり、だから次はこっちから来るなっていうのとかが、何となく」

「野生の勘ってすごい」莉世は苦笑する。

「でも今日の特訓で、あたしも少しこの本についてわかった」そう言って西久保は術書を両手で掲げる。

「日向っち、見た目は怖いけどすっごい優しい人だったな。良い大人の女性って感じで、かっこよかったし」

「日向っちって」

莉世は苦笑する。すっかり鬼神と打ち解けたようだ。

「なんか鬼神って、怪異って感じしなくない?」

西久保は開き直ったように答えた。

「南の南雲は、何をしていたんだ?」

東は問う。莉世は言葉に詰まった。

莉世は今日、操の能力で夢がいつ現実で起こったのか記憶を遡っていた。そのお陰でいくつかわかったこともあった。だが、そもそも彼らには、自分に未来を視る力があるとは伝えていない。正直、自分でも疑う事柄だが、二人に信じてもらえるだろうか。

もう目を逸らさないと決めたんだ。莉世は大きく息を吸うと、二人に向き直る。

「私、実は……未来を知る力があってさ……」

「未来を知る!?」

東と西久保は目を見開いて答える。莉世は一瞬躊躇うが、おずおず口を開く。

「正直、私も疑ってる。でも、前に病院に行ったのも……」

「スゲェな南の南雲! スーパー転校生じゃねぇか!」

「莉世ちゃんに、まさかそんな力があるなんて!」

二人は、莉世の弁解を聞かずして反応する。

簡単に受け入れられたことに莉世は呆気にとられる。

「し、信じてくれるの?」

「あぁ。怪異が本当にあるんだから、そんな能力のひとつやふたつ、あってもおかしくねぇだろ」

東はあっさりと言う。

「そうそう。それにあの病院に物の怪がいたのも、浄化ができたのも、莉世ちゃんのお陰だもんね。今まで気づかなかったけど、未来がわかっていたって言うのなら納得する」西久保も頷きながら納得する。

二人に受け入れられたことに、無意識に頬が緩んだ。

「でもそうか。南の南雲にそんな能力があるなんて。ヤマンバの術書に、北条の鬼神もあって、やっぱり四神じゃねぇか」

「あんたは何ができるんだっけ」西久保は茶化す。

「知ってるか? ガキで怪異が見えねぇやつは珍しいらしいぜ。俺は珍しい人間なんだ」

開き直った東に、西久保は肩をすくめた。

空を見上げながら歩く。真っ赤に染まった空は妖艶で、異世界へ誘うような暗さだった。しかし、そんな空の下を三人で歩くと不思議と恐いと感じない。

莉世の中で、ひとつの覚悟ができた。

現実から目を逸らさないと決めたからには、自分でできることはただひとつ。

今後起こる未来を受け止めて立ち向かうこと。

未来は簡単に変えることはできないのかもしれない。だが、現実の行動を変えることで未来が変わる可能性はある。まだまだ夢についてわからないことはたくさんある。だが、時間はかかってもひとつずつ受け止めていくことで、理解できていくはずだ。

「じゃ、莉世ちゃん、またね」

西久保の声で我に返る。いつの間にか別れ道まで辿り着いていた。

「南の南雲も疲れたよな〜しっかり休めよ」

東はそう言うと、じゃ、と手を掲げる。

莉世も軽く手を振り、自宅へと歩き始めた。

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