快音が鳴り響くたびに喚声が上がった。
情動を掻き立てるアナウンサーの実況や、蒼天に響き渡るブラスバンドの楽音が、清夏を謳歌する球場をより一層盛り立てている。
グラウンドに立つ選手や監督、声援を送る応援団、熱い解説者、そして四万人を超える観客全員が、小さな白球から目を逸らすことがない。
彼らの放つ熱い感情に圧倒され、呼吸をすることをも忘れてしまう。
それだけ私は、画面の奥で広がる眩しい世界に釘付けになっていた。
太ももにヒヤリとした冷感が襲ったことで我に返る。
「だらしな……」
傍にあるティッシュケースから数枚取り出して脚にあてがう。その手は意図せず震えていた。
夏真っただ中の午後。外は連日赤い火輪が照らし、炎暑が続いていた。
夏休み中であるものの、炎天下の中出歩けるわけもなく、クーラーの効いた室内でだらだら過ごしていた。
そんな中、偶然テレビをつけた時に目に入った高校野球に見入っていた。
画面越しであるにも関わらず、まるで自分もその場に立っているかのような錯覚に陥っていた。
球場の熱を肌で感じて震えが止まらない。近所のコンビニに出ることさえ躊躇うのに、何故かこの熱さは心地良く感じられた。
昼間から寝間着でアイスを食べている人間には、踏み入れる資格すらないとは承知している。
しかし、バクバクと鼓動は鳴っている。
視線も定まらず、宙を彷徨っている。
頭も回らず、ただただ画面から届く歓声が鼓膜に反響していた。
未知の眩しい世界故に、好奇心が湧いたのかもしれない。
「行ってみたいな……」
私は画面に映し出されている学校名を茫然と見つめた。
『コールドゲームは望まない』