晴れのち稲妻、時々虹。

Day0

春は嫌いじゃない。ラウンジから見られる桜の木が数日限定でピンク色に染まれば、毛布の手放せる小春日和が訪れる。卒業式や新学期、と変化の激しい時期ではあるものの、新しい環境に浮き立つ周囲を傍観しているのは、案外退屈しなかった。とは言うものの、随…

Day3「台風、のちに虹」②

「聞いてくれ。俺はついに渚ちゃんのプログラムを完全に攻略してやったんだ」文化祭も済み、束の間の休息がやってきた頃。僕の部屋のドアを開けながら、瑛一郎が癖のある声で言った。彼の後ろから、直樹と沙那も顔を覗かせる。「渚ちゃんのプログラム?」僕は…

Day3「台風、のちに虹」①

制服も衣替えに入り、ブレザーを押し入れから引っ張り出す。数ヶ月しまっていたことから、少し埃っぽい香りが舞った。気候は穏やかな日々が続き、ラウンジから見える木も赤く染まっている。空は秋晴れが続き、まさに〇〇の秋、と呼ばれるほどには行動しやすい…

Day2「曇り、一時雷」②

「ゆ、祐介くん?」「いきなりごめんな」二宮 祐介(ニノミヤ ユウスケ)は軽く手を上げながら謝罪する。彼は美子の妹であり、哀の幼馴染みでもある。嫌味のない笑顔に、鳶色の柔らかい髪、さらりと無地のTシャツを着こなす。フワフワした美子とは対照的に…

Day2「曇り、一時雷」①

窓の外ではセミが激しく鳴いていた。これだけ厳しい炎天下の中、よく連日活動できるなと思うも、一週間という儚い寿命であるだけ求愛行動に必死なのだろう。僕も一週間後に死ぬと宣告されるとさすがに腰は上げるだろうが、異性に積極的にアピールするかと問わ…

Day1「晴れ、時々雨」②

授業が始まる一週間は、生活に慣れるのに必死だった。中学生の時は、共同生活という意識を与えさせる為なのか、風呂や洗濯といった家事全て相部屋である人物と行う。しかし、個人部屋となる高校生になると、基本的に全てのことを一人で行わなければならない。…

Day1「晴れ、時々雨」①

【Day1「晴れ、時々雨」】春は嫌いだ。数日限定の桜が散ってしまえば、芽生える新緑から淡い雰囲気は崩れ、もれなく毛虫も発生する。時折吹く強い春風は、防寒着を手放した無防備な身に染みる冷気を孕んでいる。何より環境の変化からも、浮ついた人の軽い…

Day0

春は嫌いじゃない。地元の並木道が数日限定でピンク色に染まれば、防寒着の手放せる小春日和が訪れる。卒業式や新学期、と変化の激しい時期ではあるものの、新しい環境に浮き立つ周囲を傍観しているのは、案外退屈しなかった。僕は海に行けば、一日中浮き輪の…