7日目:藍田川
コンビニで購入していたパンを食べ終えると、公民館を後にする。一時間ほどで地元の紅原区に辿り着いた。レンタカーを返し終えると、僕らは向かい合う。「二日間、ありがとうございました。ササキさんに教えるとか言いながら、俺の方が楽しんでた気がしますが…
綱渡りの一週間
6日目:公民館
六日目、すっかり日の落ちた午後八時半。僕と庵次は、公民館前に立っていた。「すげ~自然っすね」庵次は助手席から降りながら感嘆の声を漏らす。「だね。やっぱり山の方だからすごいや」僕も運転席から降りながら、空を見上げる。久し振りの運転であったが、…
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5日目:スーパーアカハラ
五日目の夕方。僕は近所のスーパーへ向かっていた。昨日の掃除の疲れがあったのか、久し振りに家に帰ったからか、午後に起きるという罪深い行為をしてしまっただけに、「料理」というマトモな人間らしい行動を取ることで挽回したくなった。キッチンはゴミ置き…
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4日目:激安賃貸アパート
四日目。僕は退院し、自宅へと向かっていた。この周囲は下宿生が多く、辺り一帯、激安賃貸が立ち並んでいる。並木道を彩る桜は旬を過ぎたのか、半分以上の花弁が散り、ちらほら新芽が覗いている。傍の公園では子どもがはしゃぎ、老人がパンを千切って鳩に与え…
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3日目:ロビー
僕が生き延びてしまって、三日目。十五時の検診が終了し、閑散とした廊下を歩く。脳には特に大きな影響はなく、意識もはっきりしていることから、無事明日退院することとなった。廊下窓から覗く春の陽光が眩しくて目を細める。まだ四月上旬であるもののすっか…
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2日目:屋上
二日目の午後。僕は病院の屋上に上がっていた。昼下がりの太陽が肌を照らし、ほどよい暖気が訪れる。柵から街を見下ろすと、縦横無尽に歩く人の姿が目に入った。昨日一日で何とか冷静になり、現状を受け入れられるようになっていた。僕の身体は、地面と接触し…
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1日目:病室
窓の外からチュンチュンと声が届き、眩しい太陽が室内を照らす。自宅とは違う白くて清潔なふとんから新品の香りが鼻孔を擽る。今日は花粉が少ないのか、開いた窓からは爽やかな風がゆるやかに吹く。平和でのどかな朝だった。「続いてのニュースです。指定暴力…
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0日目:踏切
カンカンカンと激しく踏切音が響く。赤いランプも点滅を始め、遅れて黄と黒の立入禁止を示す遮断桿が降りる。昨夜大雨だったことから、道床に敷き詰められたバラストからは、湿気の孕んだ土臭い香りが舞った。周囲の人たちは、鬱陶しそうに顔を歪めながらも静…
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綱渡りの一週間【完結】
僕の自殺を止めたのは、無邪気な顔で笑う見知らぬ高校生だった。(ヒューマンドラマ/約30,000文字)※2021.09.25初公開
綱渡りの一週間アウトロー,ヒューマンドラマ,恋愛×ゲーム,虹ノ宮市,非日常