浮かれていたのは、私も同じなのかもしれない。
四杯目に口をつけた時、目の前がクラクラして視界が定まらなくなる。ちょうど月夜が戻ってきたタイミングで、あ、これやばいとなり、トイレに駆け込んだ。
間一髪、込み上げてきたものを便器内に吐き出す。目の前がぐらぐら歪み、視界が定まらない。飲み会も終盤に差し掛かっているのに、飲み食いしたもの全て吐き出してしまった。
呼吸を整えて水を流す。色んな食べ物の残りカスが口の中にこびりついているようで、洗っても不愉快さが拭えない。水で口をすすぐが、胃酸の酸っぱさがまだ残る。気持ち悪い。
お酒でよく吐く光景を見るが、自分がそうなるとは思わなかった。お酒の強い月夜の隣にいた影響もあったのかもしれない。自分は三杯以上は飲めない。勉強になったものだ。
呼吸を整えて席まで戻ると、金城と月夜が話していた。
月夜は私に気づくと「吐いちゃった?」と尋ねた。
「何でわかるの」
「顔でわかる」
月夜は、相変わらず澄ました表情で赤ワインを飲む。「無理しないでいいのに」
「月夜と私って、何が違うんだろう」
何気なくそう問うと、月夜は顎に手を当てる。
「私は人間」
「私も人間だけど」
若干キレ気味に突っ込むと、「地咲、意外と酔ってる?」と金城が笑った。
***
結局、今学期はあまり講義に出席できなかった。
テストはもちろん受けるが、まともに講義も出られていないのにテストが取れるわけない。落ちこぼれの講義ノートに頼らざるを得なくなった。
テストも全て持込可能なわけじゃない。最悪半分取れてたらいい、の心持ちでいようと自分に言い聞かせた。
あれだけ講義のサボる感覚がわからないと思っていたはずなのに、昨年決めた目標も、一瞬で崩れるものだと実感した。
手術後からも、土屋さんとの関係も変わらずだった。
毎日欠かさず薬を飲んでいるので、妊娠の不安はなくなった。だが、それとは別に、精神的な問題があった。
私は、確実に感情が冷めつつあった。
以前の飲み会で、金城の顔を見たことで感じた。
愛されることから逃げるのは恐い。でも、いざ解放されると、あれだけスッキリした表情になるんだ。
私は金城と同類だ。だが、彼とは違い、私はいまだに泥沼に浸かっている。
私は本当に、このままでいいのだろうか。
第三セメスター:六月 完