卒業
卒業の日。おそらくもう来ることはない、大学の夜、部室前のテラスで一人、空を見上げていた。 昼間は、袴を来て友人たちと写真を撮り、部室で送別会を受けた。 私たちを見送る後輩の涙で、いよいよこの大学ともお別れの時だと気付かされた。 就活も、秋…
星降る夜のキャンパス
第八セメスター
片想い中と恋人同士になってからは、相手の見え方が全く変わると知った。 片想いの時は、全てが輝いて見えた。想い人の些細な仕草でも胸が高鳴り、一言ずつに意味を考え、そして少しずつ相手を知ろうと近づく努力をする。 だが、恋人同士になってからだと…
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第七セメスター➁
高校三年生の夏、父がビルから飛び降りた。 理由はわからない。朝早くに家を出て、夜に帰宅する生活だったので、あまり顔を合わせる機会もなかったが、母や娘の私にも常に優しく、親戚と集まった際も一番場を盛り上げ、ムードメーカー的な存在だった。お酒…
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第七セメスター➀
三年生の春休みは、もはやないに等しい。特に三月に入ってからは、本格的に就職活動が始まった。 周囲も皆、就活モードに入る。どこの企業が良いだとか、説明会の話だとか。髪も黒くし、メイクもラメやグリッターは控え、大人しいカラーで仕上げる。 周り…
星降る夜のキャンパス
第六セメスター③
年明けテストが終わり、春休みに突入したことで、金城たちとの旅行の予定も定まった。二月下旬に二泊三日、新幹線で向かい、現地ではレンタカー移動、というプランだ。 運転は主に金城と天草。月夜も所持しているが、恐らく出番はないだろう。ちなみに無免…
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第六セメスター➁
クリスマスは、ケーキとチキンを予約し、天草の家でのんびり過ごすことになった。 ちょうどイブとクリスマスは学校もなく、引退したことで部活もない。お互いに休日だった。 お笑い特番もあり、少し豪華な食事と温かい空間でまったり過ごすことに憧れがあ…
星降る夜のキャンパス
第六セメスター➀
「空ちゃん、久しぶり!」 威勢の良い声に身体がびくりと反応する。聞き覚えのある声に振り返ると、案の定、火野さんだった。他に数人先輩たちがいる。 夏の暑さも引き、すでに冬の寒さが到来している十一月初旬。毎年思うが、虹ノ宮に秋は存在していないよ…
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夏休み➁
歳をとるほど、月日の流れが早く感じるものだった。 気づけば夏休みも終盤、天文部のイベントもいよいよ最後。 今は合宿、最終日だった。「この合宿終わったら、イベントはあと学園祭だけか。引退したらすぐ、就活」 海を見ながら天草は言った。手には合…
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夏休み➀
「私、やっぱり夏って嫌い」 人の少ない食堂内。月夜は、冷やし中華をすすりながら吐き捨てる。 私は、ざるそばを掴んだ手を止めると、彼女に顔を向ける。「なんか、前にも聞いたような」「毎年言ってるからね」 月夜は、開き直ったように手を広げた。「で…
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第五セメスター:五月⑤
あの日から、海老原くんは天文部に顔を出さなくなった。それと同時に、良くない噂が流れ始めた。「海老原くん、最近学校来ないでしょ。なんかやばい人たちに巻き込まれたみたいで」「知ってる。マルチでしょ」 地獄耳なのか、部員の話す声が届いた。 マル…
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第五セメスター:五月④
私は隠すことに必死だった。 あの日は、あの後解放されて飲み会に戻ったが、体調不良を言い訳にすぐに帰宅した。それから、海老原くんはもちろん、天草でさえ、無意識に避けるようになってしまった。 全部、私が油断してしまったせいだから。 できるだけ…
星降る夜のキャンパス
第五セメスター:五月➂
「すみません……僕のせいで、変な空気になってしまって……」 帰宅時、藍田川付近を歩いていると、海老原くんが言った。 「全然。恒星は、嫉妬しやすいだけだから……」 私は、やり辛く答える。海老原くんは、考え込むように黙り込む。 彼の肩を支えて歩…
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