星降る夜のキャンパス

第四セメスター:十月⑦

 天草のアパートに辿り着く。一Kのいたって普通の部屋。だが、普段お調子ものの彼が自立している姿が、何だか歯痒く感じた。 室内に入る。六畳一間にベッド、テレビ、ゲームなど生活感が溢れている。 ゲームやスケートボード、ギターがあり、彼の趣味の多…

第四セメスター:十月⑥

 夜。何となく大学付近まで散歩に来ていた。都心から離れた大学付近は星がきれいに見られるのだ。 虹ノ宮を横断する藍田川の歩道を歩きながら空を見上げる。 今日は雲がなく、透き通った夜だ。 皆で見ることに慣れてしまった。一人、呆然と空を見上げるの…

第四セメスター:十月⑤

 一週間ほど、私は同じことを考えていた。 もちろん、土屋さんのことだった。 おまえは、どうしたいんだ。 誰かが頭の中で問う。 怖い。別れることになったら、私が、土屋さんがどうなるかが怖い。 もう答えは出てる。別れなきゃいけない。 このままだ…

第四セメスター:十月④

 飲み屋を出た後は、予定通り二次会に参加した。だいぶ頭が冷静になった今、スマホを取り出し、メッセージを送る。『今晩、自由時間で朝まで二次会します。明日は予定ないから、それからでも良ければ会おう』 自由時間は、名前の通り、自由な時間を過ごせる…

第四セメスター:十月➂

「今日のイベント、お疲れ様〜! 乾杯!」  部長の火野さんが、そう声を上げると、乾杯とそこらでグラスのあたる音が鳴る。 私は、天文部の飲み会に参加していた。 結局あれ以来、土屋さんに会わないまま、イベント後の飲み会に来ていた。 連絡はしてい…

第四セメスター:十月➁

「そのネックレスいいね」 昼休み食堂内。 私は、目前の月夜の首元を見て言った。 三日月に星をイメージしたストーンがあしらわれたデザインだった。月夜の名前をイメージするかのようだ。 カツ丼を食べてた月夜は、つられたように自身のネックレスをじっ…

第四セメスター:十月➀

 目の前が、真っ暗になった。「十個……」 スマホを持つ手が震え、顔面が蒼白になる。 今日は、成績発表があった。 取得できた単位数は十。フル単位である二十四単位の半分以下だ。過去最低の取得数だった。 私は、ベッドに倒れ込む。 思い返せば、春は…

夏休み⑤

 合宿は、全ての日程を終え、虹ノ宮に帰ってきた。 空港で解散すると、皆重い足取りで自宅へ帰る。「え、付き合ってないの?」 帰路につく電車内。私は目を見開いて言う。「うん。まだ」 月夜は澄ました顔で頷いた。 昨晩の金城とのことを尋ねた。予想通…

夏休み④

 チェックインが終わり、部屋に入った頃には力尽きていた。なけなしの体力で風呂と夕食をすますと、ふとんの敷かれた部屋内で大の字に溶けた。 遊び疲れて人型を保つことすらできなくなっていた。日で焼けた肌がジリジリ熱を帯び、全身が火照っている。目を…

夏休み➂

 海に辿り着く。 空も海も青く澄み、すっきり晴れた海日和だ。天候に恵まれたものだ。 更衣室に辿り着くと、私たちは、買いたての水着に少しの緊張と高揚で腕を通す。 水着は、スクール水着しか持っていなかったので、合宿で海に行くと知ってから同学年の…

夏休み➁

 夏休みの合宿日が来る。 一年前は、この合宿で土屋さんと付き合うことになった。今回の合宿は早めだったので、一周年の記念日と被らなかったことに内心感謝した。被っていたら、合宿の参加の有無でまた一悶着あったに違いない。 今回は沖縄に行く予定だっ…

夏休み➀

「今日ってさ、地咲は店?」 金城が私に尋ねた。その言葉だけで、意図は察した。 八月中旬。夏休みに入り、部活動の為に学校に来ていた。 窓から差す太陽の光と騒がしい蝉の声が煩わしい活動教室内で、昨年行った天文台でのイベント準備をしている。「今日…