夏休み⑤



 合宿は、全ての日程を終え、虹ノ宮に帰ってきた。
 空港で解散すると、皆重い足取りで自宅へ帰る。

「え、付き合ってないの?」
 帰路につく電車内。私は目を見開いて言う。

「うん。まだ」
 月夜は澄ました顔で頷いた。

 昨晩の金城とのことを尋ねた。予想通り、金城は月夜に想いを伝えたようだが、どうやら恋人同士にはなっていないようだった。

「まだって?」

「だって、留学行くでしょ。それも一年」月夜は言う。

「だから、もし帰ってからも気持ちがあったら、また言って、と言った」

「大人だね〜…」

「私、こう見えて結構モテるのよ」
 月夜は挑発的に笑う。仕事モードの彼女を見た気がしてドキッとした。

「男も女もくさるほどいる。少し離れて周りを見れば、目移りすることなんてよくある話だわ。むしろ、それが普通なのよ」

 月夜は冷静に述べる。「だから、一年離れても同じ気持ちなら、よっぽどなんだって思えるわ」

「金城と付き合うこと自体はオーケーなんだ?」

 私は最も気になっていたことを問う。月夜は、しばらく黙り込むも、観念したように口を開く。

「私、基本他人に興味がなくて」

「うん、知ってる」

「だからあまり自分から話さなくて。店でも、基本客の話を聞いているだけなんだけど」

「それでナンバーワンになれるのがすごい」

「知らないかもだけど、夜の店にくる男の人って、自慢をしたい人が多いのよ」

 月夜は言う。確かに自分を認めてくれるきれいな女性とお酒を飲むのは、男の人にとったら気持ちが良いのかもしれない。図らずとも月夜の姿勢が仕事にあっていたわけだ。
 それに、月夜は意外と人を見てるし気もつかえる。指名したくなる理由もわかるものだ。

「話聞くのは意外と楽しいの。でも学校じゃ、私に話しかけてくれる人ってあまりいなくて。何なら今でも気を使われるし」

 仕事のことだとは察した。月夜は、そこまで話すと、天を仰ぐ。

「銀河は、話も上手いし私に変な気を使わない。一緒にいると楽しいかなって思ったんだ」

***



 帰宅する。母の「おかえりー」の言葉を聞き流しながら、私はふとんに倒れ込んだ。

 合宿を経て、友人たちの感情を見て、改めて気づかされた。

 自分のことは、自分が一番わかっているのに。
 土屋さんだって、嫉妬するのは裏を返すと自分を優先しての行動だ。

 私は、金城のように自分を優先できていなかった。
 この大学に来た時に決めたことだったのに。

 優先すべきことは、私の好きなことは何なのか。

 そう考えていると、無意識に指輪を外していた。

夏休み 完