第四セメスター:十一月➁



 晩御飯を適当に食べて天草の家に帰る。バス停まで自転車で来ていたようで、自転車の後ろに乗って 天草の家まで向かった。

 冬の夜空の下、藍田川を自転車で駆け抜ける。
 自転車で二人乗りなんて、まるで青春のイチページみたいだ。

 天草の家に辿り着く。一度来たことがあった家だ。

「おまえ服は?」

「一応、最低限のものはあるけど、寝間着は何か貸してほしいかも……」

「準備いいな」

 天草は笑う。やる気があると思われたみたいで恥ずかしいが、天草は突っ込まなかった。

 個別でお風呂に入る。
 彼シャツというものか。天草は体格が大きいので上のシャツだけでもワンピースみたいになった。

 風呂上りの私を見た天草は静止する。

「天草……ほんと身体大きいよね」

「……おまえが、小さいんだ」

 天草は、顔を手で覆い、大きく息を吐くと、私の元まで来て抱きしめた。

「可愛い……」

 振り絞るような声で言う。いつもの天草とは違う甘い言葉にゾクゾクとした快感が襲う。

 天草が腕を離す。目の色がいつもと違った。夜だけに彼女だけが見られる、雄の目の色だった。
 そんな瞳に私も目元が緩む。

 天草は、私に顔を近づける。唇に柔らかい感覚があった。 キスされたと気づくのに時間がかかった。

 天草は恥ずかしそうに目をそらすが、再び確かめるように唇を重ねる。
 彼に答えるように唇を重ね、舌を絡める。頭が手で包みこまれ、がむしゃらに絡みついた。

 そこからは、ほぼ流れに身を任した。天草の大きな身体が私を包む。初めてなのか、少し緊張しているようで、一つ一つの行為が手探りで丁寧で、そして愛が感じられた。

 土屋さんと付き合って知った。男の人には少なくとも女性より優位にありたい、と考えるプライドがある人にはある。土屋さんはあった。
 割り勘でも、レジ前店員さんの前でお金を渡さない、席を立つ前に渡す。などは顕著だった。
 私が処女であるかも、かなり意識していた。私に経験がないと知ると、満足気に笑ったものだ。

 一通り愛撫を終える。
 天草は、慣れない手つきでゴムをつけると、私に ピタリと身体をつける。

「加減とか、わからねぇから、痛かったら言ってくれ。こんだけ濡れてるから大丈夫だと思うけど」

「言わないでよ」
 私は恥ずかしさで手で顔を覆う。

「嬉しいよ」

 天草は、腰に力をいれる。できるだけ力を抜くと中に入ってくる感覚があった。
 久しぶりで少し痛い。最後にした日から一ヶ月も経っていないが、三日しないと処女に戻る、なんてことを土屋さんが以前言っていた。真偽はわからない。

 天草はゆっくりと腰を動かす。彼を力強く抱きしめる。身体がひとつになる感覚だった。

 擦れる感覚が快感で、そのたびに私の身体はピクリと跳ね上がる。
 天草は私を力強く抱きしめる。次第に振り絞るように力を込めた。

 荒い呼吸。そんな天草が愛おしくて、私は腰に力を込めた。
 天草は、力が入らないようにやり辛そうに顔を歪める。

「やめろ……」

「天草も、男だったんだね」

「なんだよそれ」
 
 ズルリと抜かれ、汗を拭う。私は呼吸を整えて天草に向き合う。

「いや、なんか、天草のことずっと友達と思ってたから、そういうことに興味がないのかと……」

「男に性欲がなければ、かなり不健全だぜ」

 私の倍はありそうな体格。天草は代謝がいいようで、冬に入ったこの時期でありながら汗が滝のごとく吹き出していた。

「わりぃ、めっちゃ汗かいた。シャワー入るわ。……おまえは?」

 天草が立ち上がり、こちらを伺う。
 私は一呼吸置くも、「私も入る……」と答えた。

第四セメスター:十一月 完