人間裏街道

第二部⑨

ケンカというのは、相手の意見や行動に対して、共感や賛同ができなくて起こるものだろう。肉体的にも精神的にも、個人の感情と感情のぶつかり合い、ボクシングのようなものだ。しかし、意志がなければぶつかろうという感情すら湧かないものなんだ。「違うよ、…

第二部⑧

「……テレビ?」ブラウン管テレビのような形をしたパソコンが並んでいた。薄型のものやノートパソコンは見当たらない。詮索すると端に並んでいたが、こちらもテレビの時と同じくかなり高額だ。ボックスタイプのパソコンは、小学校のパソコンルームで見た時以…

第二部⑦

壁にかけている制服のポケットの膨らみに違和感を覚えて弄る。中にはスマホが入っていた。本のことばかり頭にあり、持参したことを失念していた。裏街道では使用できるのだろうか。電源ボタンを押すと難なく画面の明かりが点灯した。ロック画面には「二○一九…

第二部⑥

「一番、最近発行された本はどれだ」予想していなかった質問に一瞬目を丸くする。「えっと、確か……」本の山を掻きわけ、目的の一冊を見つけだしてガラクに渡す。先月に発行された作品だ。私の一番お気に入りの作家さんの本だった。渡した作品のタイトルにも…

第二部⑤

ショッピングモールまで足を運んだ際、街を歩いて思った。注意深く観察すると、住民の存在は確認できる。建物内からこちらを訝し気に観察する人、道端にしゃがみ込んでいる人、メガネをつけていないと気づかないわけだ。裏街道では、仕事はもちろんだが、それ…

第二部④

久しぶりの光がとても眩しく感じる。目が明るさに慣れるまでは動けずにいた。この部屋は蒸し風呂のように暑い。自然と額から汗が流れてきたので、制服の裾で拭った。こちらの世界では真夏だった。数日部屋を空けていたのだから、室内がサウナ状態になるのも当…

第二部③

夢を見た。舞台は私が幼い頃によく訪れていた公園だ。目の前には見覚えのある顔の少女がブランコに乗っている。しかし、少女の名前を思い出すことができない。どうやら私は、この少女と二人で公園に遊びに来ているところのようだ。よくある日常を切りとった一…

第二部②

机の準備を終えたタイミングでガラクが風呂から上がってきた。おかえり~とメイが声をかけたので、私もつられて視線を向けると、怪訝な顔で私を見るガラクの顔があった。「何で、こいつがいる」ガラクは今まさに風呂から上がったという風貌だ。いや、正しくそ…

第二部①

私の本能が、目前にいる人物を「変な人」だと言っている。目前に広がる道路の中央に、三十代くらいの男性が、裸で大の字になって寝転んでいた。いや、厳密には、本人が配慮しているのか、誰かが気を使って供えたのかわからないが、見えてはいけない大事な部分…

第一部⑥

・外観は表の世界と変わらない・裏街道の住民の白目部分は黒い・表の人間を見ると嫌悪感を抱くものもいる・変化は起きないが動くと眠たくはなる・住民は暗い場所を好み太陽は昇らない・時間の流れを感じるようなものが存在しないこんなところか。表世界では現…

第一部⑤

その瞬間、ギャッという声が聞こえた。それと同時に、全身が解放されて軽くなる。私はその隙を逃さずに身体を起こした。何かが建物に衝突したような鈍い音が響く。音の鳴った方へと顔を向けると、コンビニの入口前に、力なく倒れている少女の姿があった。この…

第一部④

玄関入って左手に建物内の地図があったので確認する。このアパートは三階建てで、部屋は一階毎に三部屋ずつある形だった。私は何となく二階の一番左側、二○一の部屋に決める。誰もいないとは言っていたが、念の為ノックをして入室した。扉の右手側に電気のス…