終
「そこまで。みんな、ペンを置いて」チャイムと共に、教壇に立つ試験監督長が叫ぶ。その言葉を皮切りに、辺りで一斉に脱力する声が漏れた。教室内の隅に佇んでいた試験監督バイトたちが立ち上がり、颯爽と解答用紙を回収する。諸々のチェックが済んだ後、改め…
人間裏街道
第四部②
行きとは別に、回り道をして自宅に向かう。右手には川が広がっていた。橋の下ではBBQを楽しむ若者グループが何組か確認できる。肉の焼かれる音と、甲高い笑い声によって橋が共鳴する。川辺には小さな子どもがはしゃいでいた。この暑い中、BBQなんてよく…
人間裏街道
第四部①
「あつーい!」部屋の中で一人叫ぶ。それと同時に汗が滝のように噴き出した。前回来た時から二十日ほど経っている。真夏にクーラーもつけずに、それだけの期間留守にしていたのだから、部屋が地獄になっていてもおかしくない。外ではヒグラシが鳴いていた。メ…
人間裏街道
第三部⑨
ガラクの頬に真っ赤な雫がぽたりと落ちた。元を辿るとメイの手から流れ出たものだった。刃の部分をあまりにも力強く握り占めていることで手のひらが切れていた。「メイ……手……!」「やっぱりさ…できるわけないよ……だって…ボクの初めての友達だもん…」…
人間裏街道
第三部⑧
色が判別できるようになってから気づいたことは、この街の空は元から薄暗いということだ。表で例えるならば、曇天。しかし雨が降る気配は今のところ感じず、また太陽が顔を覗かせることもない。沈黙が続いた。ガラクは私の為に語りたくないだろう過去を教えて…
人間裏街道
第三部⑦
自室のベランダから茫然と外を眺めていた。ポケットにしまっていたスマホを取り出す。画面には「二○一九年八月二十七日 二十二時十四分」と表示されていた。「あと、三日か……」いまだに時間間隔が掴めない。気づけば日が経っている。前方を見ると、遠くの…
人間裏街道
第三部⑥
アパートまで辿り着き、メイの部屋へと訪れる。風呂から上がってきたメイは、どう見ても先ほどのメイとは別人の顔つきだった。子犬のように栗色の髪をプルプルと震わせ、「スッキリしたー」と叫び、しきっぱなしにしていたふとんの上にダイブする。私はその光…
人間裏街道
第三部⑤
その瞬間、外から声が聞こえた。私はカーテンの隙間から窓の外を覗いた。制服を着た女の子が倒れていた。いや、正確には倒されていた。彼女の目線の先には中年くらいの男の人が立っている。中年男は女の子にじりじりと近寄っていた。そのたびに彼女は後ずさり…
人間裏街道
第三部④
通常、表で逃避願望が生まれると、目が黒くなり現実が見えなくなる。そして気づいた時には裏街道に来ていた。だから具体的にどのような方法で裏街道に来たのかがわからないとガラクは言う。だったら「私が通ってきたトンネルのような場所は一体何なの……?」…
人間裏街道
第三部③
一人で訪れるのは初めてなので、少し緊張した。おそるおそる扉を開け、本が積まれている場所に目を向ける。来るたびに量が増している気がするな。しかし、いつもの場所にガラクの姿は見られなかった。「あれ?ガラク?」驚いて館内を見回す。図書館以外にガラ…
人間裏街道
第三部②
アパートの玄関前まで来ると、ちょうどメイが階段を上がっているところだった。背中を向けていたので私の存在に気づく様子もなく、小さく安堵した。しかしすぐに違和感を抱く。メイが居住にしているのは、一階玄関横すぐの部屋のはずだ。心臓が高鳴り変な汗が…
人間裏街道
第三部①
二○一の部屋の中。私はふとんの上で大の字になっていた。天井の片隅にシミみたいなものがあるな、とぼんやり眺めていた。先日、衝撃的な事実を多々知ったことで、脳内がキャパオーバーを起こし、情報処理速度が低下してショート寸前だった。そばに置いていた…
人間裏街道