檸檬と彗星

終頁

 八月中旬。今日は、暁と藍河稲荷神社のお祭りへ向かう予定だった。 噂では聞いていたが、訪れたことはない。大規模なお祭りのようで、内心ワクワクしていた。 貯めていたお小遣いで購入した浴衣を母に着付けてもらった。ニヤニヤした顔つきは、もはや私が…

4頁目「非日常から日常」④

 私の言葉が予想外だったのか、惟月は目を見開く。 数秒後、「うん。こちらこそありがとう」と普段の穏やかな表情になった。「……彼はまだ僕に、不満がありそうだけど」 惟月は、そう言って土手にいる暁に視線を向ける。振り返ると、暁はどこか困惑した表…

4頁目「非日常から日常」③

「小夜ちゃん、どこ行ってたんだよ」 教室もどると、真宵が声をかける。「ごめん、ちょっと……」 そう言ってカバンを手に取り、教室から出た。 今日は午後からホームルームだけだ。あの担任のことだから適当に挨拶して終わりだろう。だから少し早く学校出…

4頁目「非日常から日常」②

「半分正解です。天使の輪を持つ人間には、幸福が訪れやすくなるのです。ですが私たちは、あくまで幸福へ導くだけです。『運が良くなる』と表現する方が理解しやすいでしょうか。幸運を生かせるか、どの程度が幸福と感じるかは対象次第ですから」――――キミ…

4頁目「非日常から日常」①

「うしろ、通るね」 そう言うと、通路を塞いでいた人は「あ、小夜ちゃんごめん」と身体を避ける。私は軽く頭を下げながら通路を通った。 表情には表れないものの、口に出して言えるようになっている自分に内心驚いていた。修学旅行で同室となった東雲や未明…

3頁目「憧憬から愛慕」⑪

「これでいい?」 その声で彼の方を見る。暁はじっと私のことを見ていた。 そんな彼に、今つけられたヘアピンを見せるようにする。「に、似合うかな……?」 そう問うと、暁の表情が歪んだ。「…………もしかしなくても、俺のマネ?」「そうかも」素直に答…

3頁目「憧憬から愛慕」⑩

「あいつモテるよな。転校生って謎にモテるけど、璃空は特にだったよな」真宵は、満更でもなさそうに頷く。 この街について詳しくなさそうだったが、どうやら中学の時に転校してきたからのようだ。「私も実は、中学の時はいいなと思ってた」 東雲は、若干頬…

3頁目「憧憬から愛慕」⑨

 宿舎に辿り着く。宿は京都駅から少し離れた場所で、自然が確認できる場所だった。「デカい風呂、最高だったなぁ〜!」 宿舎の部屋で、寝具姿の真宵は、髪を拭きながら言う。大浴場で四肢を広げて大浴場に浸かっていた彼女を思い出した。中々大きなお風呂に…

3頁目「憧憬から愛慕」➇

 雨天の続く六月中旬。 明日から待ち望んだ修学旅行の時期となった。 修学旅行も、あいにくの曇天。だが、雨が降っていないだけマシだと考えることにした。「ビルが全然ねぇな」 真宵は、抹茶味のお菓子をボリボリつまみながら呟く。「京都は、景観条例が…

3頁目「憧憬から愛慕」➆

 水曜日。六月で梅雨入りしたこともあり、天候はすぐれなかった。だが、土砂降りではないので、川へ向かうことにした。 惟月はいた。いつものように、ベンチに座っている。 私を見ると、優しく笑った。「今日は来てくれた」 その言葉に、私の顔は青ざめる…

3頁目「憧憬から愛慕」➅

「わ、わぁ……!」 無意識に笑顔になる。私は周囲を見回す。 夜であるだけ、地元の人もちらほら確認できる。ゆらりと光っては消える。そのたびに流星を見たような感覚になった。「今日はアタリだね。雨上がりで空も澄んでるし、すごくきれい」 暁も、宙を…

3頁目「憧憬から愛慕」➄

 金曜日。今週は雨が続いていたが、幸いこの日は曇りだった。 今日は放課後から、暁とホタルを見に行くと約束した日だった。私は、普段の学校準備に加えて、財布や身だしなみのポーチなどを準備した。 メッセージでのやりとりの中、暗くなってからなので放…