檸檬と彗星

3頁目「憧憬から愛慕」④

 私は、歯痒い思いだった。 なんで誘ってくれたのだろう。偶然会えて、偶然家に送ってもらえたからだろうか。それにしては、夢を見るには、十分すぎる出来事だ。 薄暗くなったことを良いことに、背中に顔を近づける。彼の香りがより一層強く、顔全体を包ん…

3頁目「憧憬から愛慕」③

 ホームルームが終わり、放課後時間となる。「璃空~、今日暇か?」 友人たちが暁に声をかける。「悪い、今日用事ある」 暁は、申し訳なさそうに手を上げる。 毎日誘われる暁の姿は、すっかり見慣れた光景だが、もしかしてバイトかな、だなんて聞き流しな…

3頁目「憧憬から愛慕」②

 水曜日のホームルームから、修学旅行の話題が中心だった。 担任は、やる気がなさそうに予定を黒板に書く。訪れたことのない私でも聞いたことのある神社や地名ばかりで、スタンダードなコースだと感じられた。 担任が一通り説明を終えると、残りは先週決め…

3頁目「憧憬から愛慕」①

 次の日の木曜日。 昨日がゴールデンウィーク最終日だった為、今日から再び通常通り学校があった。 私は、教室の後方扉を開く。中は誰もおらず、一番乗りだった。 時計を確認すると、七時半。うちは朝練をしている部活動もあることから、門は六時過ぎた頃…

2頁目「脇役から主人公」⑨

 バーベキューも終盤になり、食事を終えた皆は、川で遊んだり、片づけをしたりして各々自由時間を過ごしている。暁は、川で遊ぶ子どもたちに混ざって遊んでいる。日中は、準備をサボっていたからか、先輩にこき使われていた。 準備は任せてしまったので、片…

2頁目「脇役から主人公」➇

 ゴールデンウィーク最終日、今日はバーベキューの日だ。  五月初旬であるにも関わらず、照りつける太陽は初夏を思わせる。私は肌が弱く、太陽の下にいるとすぐに赤くなることから、日焼け対策は万全に行った。 集合場所である藍田川へ向かうと、すでに人…

2頁目「脇役から主人公」➆

 お昼時、雲ひとつない快晴で、太陽は高く街を照らしている。五月初旬であるにも関わらず、すでに日光が肌を焦がすほどの照り具合だった。  私は、藍田川へ向かっていた。恵まれた天候で、休日にせっかく外に出たのだから、このまま帰宅するには惜しかった…

2頁目「脇役から主人公」➅

 学校終了のベルがなる。真宵は友人たちと部活動へ、日中は生徒会へ、暁も友人たちと教室を出た。放課後は各々の時間があるものだ。 水曜日の今日は私も予定がある。下校準備を済ますと、教室を出た。 私は、まっすぐ藍田川へ向かった。気持ち急いでいたの…

2頁目「脇役から主人公」➄

 やっぱりみんな 食堂行ったことあるんだなぁ。 学食があるとは知っていたが、私は行ったことがなかった。一人で訪れる勇気なんてあるわけもなく、一緒に行く人がいないとも言える。ただ、どこかそう思われるのが恥ずかしいとも思ってしまった。 彼らにと…

2頁目「脇役から主人公」④

 次の日。火曜日の1時間目は移動教室だった。そのた為、私は登校すると、準備を整えた後に教室を出た。化学なので理科実験室へと向かう。 まだ登校時間の朝の廊下を歩く。グラウンドでは、朝練を終えた生徒たちが、用具を片付ける姿が目に入る。そばの花壇…

2頁目「脇役から主人公」③

「惟月って人、知ってる?」 体育終了後の昼休み、教室で着替え中に思い切って真宵に問いかけた。体育の授業中にずっと思考し、しぼり出した話題がこれだった。 惟月は同じ制服を着ていたので、金清高校の生徒であるには違いない。顔の広い真宵なら知ってい…

2頁目「脇役から主人公」②

 ヘアピンを二本、無事につけ終えると、おそるおそる「これで、大丈夫?」と問う。その言葉で暁は顔をあげる。「どう、かっこいい?」 暁は、顎に手を当ててキメ顔をする。昨日の発言を掘り返されているように感じ、一瞬で顔面が赤くなった。「は、はい………