夢現の恋蛍

1時間目:社会8

「ほら、だから忠告したではないか」落ち着いた声と共に、ひやりとした風が吹く。それと同時に、莉世の身体の緊張はふっと解かれた。何者かが目前に着地する。まるで時間が操作されているかのように、時はゆるやかに流れていた。莉世の前に、一人の少年が立っ…

1時間目:社会7

「ま、よく考えたらこの神社でよくかくれんぼとかしてたしな」友人も頷いて同調する。地元民の言葉でも不安はぬぐえない。むしろ何故、東が無事だったのかが気になるほどだった。しかし、しばらく歩いた後、皆の顔色が変わる。「あれ、この看板……」西久保は…

1時間目:社会6

時刻は、午後四時〇分。ベルが鳴り響き、ホームルームが終了する。「おい、おまえら! 行くぞ」東は、意気揚々と莉世たちの席までやってくる。彼の後ろには、三人の友人もいた。「そうだね。楽しみじゃん」西久保も鞄を肩にかけて立ち上がる。そのタイミング…

1時間目:社会5

昨晩は妙な夢を見なかったことから気分が良い。莉世にとって一日のモチベーションは、ほぼ朝で決まると言っても過言ではなかった。難なく学校まで辿り着く。すっかり入学式の空気は消え、古びた木造建築の公立学校となっていた。さっそく授業も昼過ぎまで詰ま…

1時間目:社会4

風呂を済ませ、二階の部屋へ戻る。転居してきたばかりで、部屋の隅にはいまだ段ボールが積まれている。父の新調してくれた真新しい勉強机が年季の感じられるこの部屋には浮いていた。勉強机に置きっぱなしにしていたスマホを手に取る。電源を入れると、何件か…

1時間目:社会3

入学式が済み、ホームルームで諸連絡がされただけで今日はお昼前に解散となった。クラスメイトが他愛無い会話をしてる中、莉世は書類をまとめてカバンに詰め込むと、そそくさと学校を後にした。自宅までたどり着くとがらりと扉を開く。台所に立つ祖母の姿が見…

1時間目:社会2

 まだクラス発表されたばかりからか、一年クラスの並ぶ一階廊下は閑散としていた。朝日の恩恵を受けようとしているのか、電気がついていない。だが残念ながら北側で薄暗い。壁に飾られた新入生歓迎のリボンも気持ち程度の祝福にしか感じられなかった。 こっ…

1時間目:社会1

……………………………………………………………………………………せ……なせ!誰かが、焦燥感ある声で叫ぶ。…………すけて……甲高い声が、脳内にこだまする。「誰……?」莉世は、夢の中で問う。しかし、周囲は暗く、ここがどこなのか、彼らが誰なのかわ…

始業前

昨晩の大雨から氾濫した川は轟々音を鳴らす。濁りのある水が鉄柱を打ち、普段は下りられる高架下をも水で溢れている。川はこの街一番の広さであり、現在はすっかり雨も止んでいることから幸い人々の生活が脅かされるほどの被害にまでは及びそうもない。そんな…