放課後
随分と長い時が立った。莉世たち「守護隊」として藍河稲荷神社小川でホタルを見送るのも、もう十回目となっていた。「何度見ても思うが、すげぇ数だよなぁ」東は周囲を見回しながら言う。その声は落ち着き、背も随分と高くなっていた。「だよね。でも、すごく…
夢現の恋蛍
6時間目:道徳4
時刻は、午後十一時四十五分。莉世は、自宅の布団に横になっていた。父親の使用していた衣服や布団はいまだ片付けられていない。父親がそばで見守っている安心感から、あえてこのままにしていた。今では少し回復してきたとはいえ、それでも孤独であるには違い…
夢現の恋蛍
6時間目:道徳3
封印の社に辿り着く。日向が扉を開けると、そこには十人の鬼神の姿があった。操や斑に、初めて見る鬼神もいる。皆人型だが、人間ではない空気が漂っていた。「莉世ちゃん! おっそいぞ!」ツインテールに尻尾の生えた鬼神、八角は、眉間にしわを寄せ、ピリピ…
夢現の恋蛍
6時間目:道徳2
その後、三人で西久保の元に向かった。西久保も、意識は回復していた。腕にはギプスを、頭には包帯が巻かれ、周囲には点滴パックなども確認できる。四人の中で、一番重症であったとはすぐに伝わった。身体は起こせていないが、無愛想に顔を背けている。ドアを…
夢現の恋蛍
6時間目:道徳1
莉世が目を覚ました時、病院内のベッドの上だった。身体を起こすと、ピリッとした痛みが走り、顔を歪める。以前、東たちと訪れた廃病院ではなく、壁や床は白く、衛生的な香りもする。周囲には、誰もいなかった。茫然とするが、突如ガラッと勢いよくドアが開く…
夢現の恋蛍
5時間目:歴史9
そこで目が覚めた。隣には、何も言わない白髪の青年の姿があった。その姿は、まさに今見ていた映像の土地神と同じだった。「あなたは、土地神なのですね…………」「……さぁ、どうでしょう。この世に自分に似た人物は、三人いると言われてますしね」白髪の青…
夢現の恋蛍
5時間目:歴史8
水月は、門の前に立っていた。門は二つあった。その間には「運命の審判」と書かれた看板がある。「……これは?」周囲を見回すが、誰もいない。そんな時、空から声が降る。――――運命の審判です。あなたには、二つの道が与えられました。「……何だ、これは…
夢現の恋蛍
5時間目:歴史7
燐音が藍河稲荷神社で過ごすようになり、約九年。燐音は、来週で十六の誕生日を迎えるほどにまで成長した。「私、絶対、お嫁さんにもらってもらうからね」燐音がそう口にした時、水月は驚愕した。ポーカーフェイスが自慢でもあったが、さすがに顔が崩れる。「…
夢現の恋蛍
5時間目:歴史6
時は、五月下旬。燐音と水月の姿は、神社横の小川にあった。その時は、燐音が小学六年生になったばかり。暮色蒼然の空には、大量の蛍光色が音もなく舞っている。燐音は、嬉々として周囲を見回す。「何か、前よりもホタルすごく増えた気がする……!」「そうで…
夢現の恋蛍
5時間目:歴史5
――――――――――――――――――――そこでふっと、目前の映像が途切れた。莉世は、静かに涙を流していた。あまりにも切なくて、あまりにも辛い。こんなに悲しい現実を受け止める負担が大きかった。「……今の過去は、『春明』を中心とした現実でした」…
夢現の恋蛍
5時間目:歴史4
夜が明けると、物の怪は姿を消していた。環が率いて身を隠した。昨夜の騒動が悪夢だと疑うほどにあっさりした幕引きだった。悪夢で済ませられるならどれほどよかったか。春明は、一夜にして仲間も両親も妻も失った。精神は崩壊していた。崩壊しないわけがなか…
夢現の恋蛍
5時間目:歴史3
環は圧倒された。春明のことは、全て調べ上げた。その上で、少し内に入り込めば、簡単に崩れると思った。だが、人間の人を想う感情というものは、これほどにまで強いものなのか。羨ましい。妬ましい。ずるい。卑怯だ。そんな感情が、環の表情に歪に生み出され…
夢現の恋蛍